ポートの造設手術が終わると、心電図、心エコー、歯科の受診がありました。
入院初日から、いろいろな検査や受診が続きました。
夕方になると、ポートを入れたところが筋肉痛のように痛み始めました。
手術をしたばかりなので、多少の痛みは仕方ないと思っていました。
そんな中、夜になって、つらいことがありました。
それは、夫のことです。
病名は言わないでとお願いしていた
夫には、私が病気になったことを職場に伝えること自体は構わないけれど、具体的な病名までは言わないでほしいとお願いしていました。
何度もお願いしていました。
自分がどんな病気なのかを、誰に伝えるのかは自分で決めたかったからです。
ところが、夫は上司2人に私の病名を伝えました。
私があれだけ「言わないで」とお願いしていたのに。
通勤手当のため?
夫の希望で、私が治療している間は、夫も私の実家で生活することになっていました。
そのため、職場に通勤手当の申請をする必要があったそうです。
夫が言うには、その申請のために私の病名が必要だったとのこと。
でも、私は、
「病気だということだけ伝えればいいじゃん」
と思いました。
私の実家から通勤することがあるので、そのことについて職場の許可だけもらっておいてほしい。
私はそれだけお願いしていました。
そもそも、通勤手当などのお金のことは、私にとってはどうでもよかった。
お金にこだわっていたのは夫のほうでした。
それなのに、わざわざ私の病名まで伝えた。
私は正直、
「本当に通勤手当のため?」
と思ってしまいました。
あれだけ言わないでとお願いしていたのに。
言いたくて、言いたくて仕方なかったんじゃないの?
そんなふうにまで思ってしまいました。
そして、夫から言われたこと
さらに夫から、私の病気のことで仕事を休むことについて、
「同僚から、出張も行かんし、休みばっか取りやがってって思われていく」
と言われました。
そして、
「〇〇(私)も失ったものは大きいのは分かるけど、俺はこれから職場でもっと多くのものを失う」
とも言われました。
夫にも、夫なりに失ったものがあることは分かります。
私が病気になったことで、夫の仕事にも影響が出る。
休まなければならないこともある。
出張に行けなくなることもある。
それは分かっています。
でも、私はそのとき、生まれたばかりの娘を家に残して入院していました。
朝には、娘との最後の授乳をしてきたばかりでした。
これから抗がん剤治療が始まる。
自分のことで精一杯なのに、夫から「自分は職場で失うものがある」と言われた。
正直、
「今、それを私に言う?」
と思いました。
夫は、せめて通勤手当だけでもどうにかしたかったらしい。
でも私にとっては、そんなことは本当にどうでもよかった。
私はそれよりも、娘のこと。
これから始まる治療のこと。
そして、ちゃんと生きて娘のところに帰ること。
それだけで精一杯でした。
こいつ、人の心持ってるんか?
この出来事が、治療よりつらかったわけではありません。
治療のほうが、もちろん怖かった。
でも、夫の言葉を聞いて、
「こいつ、人の心持ってるんか?」
と、正直思いました。
私だって、失ったものは大きい。
母乳育児だって、もっと続けたかった。
生まれたばかりの娘との時間だって、もっともっと過ごしたかった。
それでも私は、娘のために治療を受けて、生きるしかない。
そんな状況でした。
だから、あの夜の夫の言葉は、今でも忘れられません。
治療そのものよりつらかったわけではない。
でも、
「どうして今、この話を私にするんだろう」
という気持ちは強く残りました。
入院初日。
ポートを造設して、これから抗がん剤治療が始まる。
娘との最後の授乳を終えたその日に、私は夫に対して、
「この人、人の心持ってるんか?」
と思ったのでした。

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